労働法制の改悪を阻止し、労働者の権利確保に資する法制度を実現するための決議

2007/11/10

 

労働法制の改悪を阻止し、労働者の権利確保に資する法制度を実現するための決議

  1. 政府・経済界は、「労働ビッグバン」(労働市場改革)の名の下に、大胆な規制改革を推し進めようとしている。
    日本経団連は、07年規制改革要望(6月29日)において、派遣禁止業務の解禁など派遣法の全面的規制緩和、労働時間規制の適用除外制度の拡大、解雇の金銭解決制度の導入など一層の規制改革を求めており、政府の規制改革会議「再チャレンジワーキンググループ労働タスクフォース」も、5月に発表した意見書で解雇の自由化を柱とした労働者保護法制の抜本的改革を提言している。
    規制改革会議の第一次答申からは、労働ビッグバンの言葉は姿を消したが、答申に現れた「正規・非正規の壁」の克服という言葉が示すように、政府・経済界は、正規労働者と非正規労働者を対立させつつ、すべての労働者の労働条件を非正規並みに切り下げることを企図している。労働ビッグバンの中核が、市場原理主義に基づき「労働の商品化」を極限にまで推し進めようとするものであることは、明らかである。
    しかし、このような労働者にだけ負担を負わせようとする経済界の傲慢な態度が国民の反発を招き、国民意識は大きく変化しつつある。われわれは、この機会を最大限に生かし、幅広い運動の中で、労働時間法の解体、派遣労働の自由化をはじめとする労働法制の改悪を全力で阻止し、働く人が安心して生活できる労働法制の構築に向けて、引き続き取組みを強めていく。
  2. 労働契約法は、労働契約の成立・展開・終了という職場生活において生起する労働契約上の様々な問題について、これを民事的効力をもって規律し、使用者の専横を許さず、労働者保護を図る法でなければならない。現在の法案は、内容面であまりにも不十分であるうえ、労働契約と就業規則との関係の法定を中核とするものであり、使用者の一方的決定で制改訂しうる就業規則に強い効力を持たせる結果となり、合意原則がないがしろにされる危険性が高い。
    われわれは、2005年の立法提言を基盤に、新しい政治情勢の下、真に労働者のためになる新しい時代にふさわしい労働契約法の実現を目指す。
  3. 労働基準法改正法案には、80時間を超える時間外労働の割増賃金率を50%以上とする条項など盛り込まれているが、これは、過労死ラインと呼ばれる長時間労働の存在を容認するものであり、法案は全く時短に資するものではない。
    適用除外(エグゼンプション)の拡大は、07年通常国会への法案上程は断念されたものの、国民世論の動向、政治状況の変化次第で再燃必至であり、また、ワークライフバランス実現の名の下で時間規制が掘り崩されるおそれもある。警戒を怠ってはならない。
    07年骨太方針ではサマータイムの導入と平成22年までに「テレワーク人口倍増」の実現がうたわれている。いずれも、ワークライブバランスの実現のためとされているが、労働者1人1人に要求される仕事の量や成果主義による競争環境が変わらない限り、かえって長時間労働の温床となる危険性がある。特にテレワークについては、事業場外みなし制の特例、新しいタイプの裁量労働制、独自のみなし制度又は新たな制度の選択肢を示し、労働時間規制の緩和を進めるべきであるという議論が既に出ている。
    長時間労働の解消は、労働者の心身の健康や家庭生活を保全するばかりでなく、少子化対策、失業対策、環境対策としても有効であり、生産性の向上をも生む。
    まず必要な労働時間政策は、現行労基法を日本の隅々まで徹底する政策である。36協定の締結と遵守の徹底、違法な管理監督者としての処遇の禁止だけでも相応の成果があろう。そして、業務量や責任を法で直接規制しえないとすれば、法が求める労働時間規制を実現する実効ある方策として、労働時間の上限規制、完全週休2日制の法定、休息時間(勤務間隔時間)の導入などの法規制が急務であり、われわれは、これらの実現に向けて全力で取り組む。

2007年11月10日

日本労働弁護団 第51回全国総会