教育基本法改悪に反対する決議

2006/11/11

 

教育基本法改悪に反対する決議

  1. 政府は本年4月28日、教育基本法「改正」案を国会に上程し、安倍内閣は臨時国会の重要法案と位置付け、成立させることを表明している。この「改正」案は、現行教育基本法前文から「われらは、さきに、日本国憲法を確定し」との文言を削除して日本国憲法とのつながりを断ち切る一方、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する…態度を養う」として、子どもの心の中に法律で「愛国心」を押しつけようとするものである。さらに、男女共学の条項が削除されており、女性差別撤廃の国際的な流れにも反する内容である。
    そのうえ、戦前の国家主義的、軍国主義的な教育に対する反省から定められた教育基本法10条から「国民全体に対し直接に責任を負う」との部分を削除し、「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところに行われるべき」と変更している(「改正」案16条1項)。改正案には「不当な支配に服することなく」との文言は残されているが、結局のところ、国家が教育内容に介入し統制する仕組みとなっている。
  2. 東京都では、東京都教育委員会(都教委)が2003年10月23日付通達により、入学式・卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱の際に、起立して斉唱すること、ピアノで伴奏をすることなどを事細かく定め、これに従って児童生徒を指導することを教職員に命じた。そして、この通達及びこれに基づく一連の指導等を根拠に、現在までに延べ345名にものぼる教職員が懲戒処分を受け、さらに懲戒処分を受けた者には強制的に研修が命じられ、定年後の再雇用を拒否されるなど、行政による教育現場への介入が続いている。
    これに対し、2006年9月21日、東京地方裁判所(難波孝一裁判長)は、都立学校の教職員らが、東京都及び東京都教育委員会(都教委)に対して、国歌斉唱義務不存在確認等を求めた訴訟(「日の丸・君が代」強制予防訴訟)において、原告らの請求を認めて、①原告らに卒業式等における国歌斉唱の際に、起立・斉唱・ピアノ伴奏の義務がないことを確認し、②起立・斉唱・ピアノ伴奏をしないことを理由にいかなる処分もしてはならないとし、③10.23通達によって原告らが被った精神的損害に対する慰謝料の支払いを命ずる画期的な判決を言い渡した。
    東京地裁判決は、都教委通達とこれに基づく一連の指導等が「教育の自主性を侵害し、一方的な理論や観念を生徒に教え込むことを強制することに等しい」と指摘し、教育基本法10条1項が禁ずる「不当な支配」に該当して違法であり、憲法19条の思想・良心の自由を侵害するものであることを明確に判示したものである。同判決は憲法及び教育基本法に基づく正当な判断をしたものであり、高く評価できる。
    神奈川県教育委員会でも都教委の動きを後追いする動きを見せており、教育基本法が改悪されたならば、このような動きが全国各地で強まることは必至である。神奈川県では、県立学校の教職員らが国歌斉唱義務不存在の確認を求める訴訟を横浜地裁に提起してたたかっている。
  3. 教育基本法「改正」案が成立すれば、児童生徒に対して「愛国心」が押しつけられ、内心領域に対して国家が介入し統制する教育がまかりとおることになる。そうなれば教育の自主性、そして「思想・良心の自由」という最も基本的な精神的自由が侵害されることになる。
    われわれは、教育基本法の改悪に強く反対するとともに、「思想・良心の自由」を求める各地の教育労働者らのたたかいを支援することを、ここに決議する。

2006年11月11日

日本労働弁護団 第50回全国総会