労働審判制度実施にあたっての申入書

2006/2/16

 

労働審判制度実施にあたっての申入書

2006年2月16日

日本労働弁護団
幹事長 鴨 田 哲 郎

最高裁判所事務総局民事局  御中

労働審判制度が本年4月1日から始まることを受け、制度に対する大きな期待が寄せられています。われわれも労働紛争の解決において画期的なこの制度が定着し、大きな役割を果たすよう努力したいと考えています。
ついては、制度の適正かつ充実した運用を図るため、下記の点につき、早急に検討されたく申入れる次第です。

1.審判員に期日前に書証を送付すること

労働審判規則では、申立書及び答弁書に添付される書証(甲・乙号証)については、正本(委員会分)と写し(相手方分)のみの提出を求め、審判員用の提出を求めていない。貴局の解説によれば、当事者の負担を考慮してとのことである。しかし、第1回期日にできる限り委員会として事案の内容を把握するためには、審判員が申立書・答弁書と共に甲・乙号証を検討することは不可欠である。
よって、裁判所の責任において書証も審判員に送付することを求める(少なくとも、当事者が審判員用の写しを提出した場合は、これを審判員に送付すること)。

2.期日の呼出方法は、申立人の意向に沿って決めること

労働審判法規則では、第1回期日の相手方の呼出方法は特別送達に限られるものではなく、運用としては特送を予定していないと伝えられる。しかし、特送によらなければ、相手方に出頭義務は課されない(労働審判法29条、非訴法10条、民訴法94条2項)。
よって、第1回期日の呼出方法は、特送によるか否かにつき申立人の意向を確認し、申立人が特送によることを求めた場合には特送による呼出しを行うよう求める。

3.審尋の記録化を認めること

制度の運用として、期日に行われる参考人・当事者の審尋等について、速記、録音等の記録化は考えておらず、当事者がこれを行うことも認めないかの如き発言等がなされている。しかし、参考人等を威圧するからとの理由は全く根拠とならない。
よって、少なくとも両当事者が了解している場合は、当事者による録音等を認めるよう求める。

4.審判書は実質的な理由の要旨を記載すること

法が要求している「理由の要旨」の記載内容は、定型文言(例えば、「当労働審判委員会は、審理の結果認められる当事者間の権利関係及び本件労働審判手続の経過を踏まえ、本件に最も適切な解決案として、主文のとおり審判する」)で足るとの発言がなされている。しかし理由の記載は、異議申立をなすか否かの判断において重要な判断材料である。
よって、簡潔でもよいが、形式的な定型文言ではなく、実質的な判断理由の要旨を記載することを求める(審判書に代わる調書の場合も同様)。