(決議)労働法制の整備に関する決議

2003/11/11

労働法制の整備に関する決議

 日本労働弁護団は、日本のすべての労働者及び労働組合の権利擁護のために活動し、ことに、85年以降の重要な活動の柱の一つは、労働法制を充実させ、既存の労働法制の改悪を阻むことであった。この間、男女雇用機会均等法、育児介護休業法等を除き、労働法制の規制緩和は大きく進んだ。
  さらに本年、派遣労働の大幅自由化、有期雇用期間の上限延長、企画業務型裁量労働制の適用範囲拡大や手続緩和などが行われ、雇用流動化・規制緩和路線が推進された。
  これに加えて、日本経団連は、種々の規制緩和を要求し続けている。とりわけ、ホワイトカラーの多くを労働基準法による労働時間規制の対象から除外するホワイトカラー・イグゼンプションや今次改正では見送られた金銭による労働契約終了制度の導入を強く求めており、厚生労働省内において実態調査と検討が今後行われる。
  日本労働弁護団は、本総会の名において、賃金不払残業やいわゆる『過労死』問題等を解決するためにも、労働時間規制のこれ以上の緩和に反対するとともに、現行規制の厳格な遵守及び規制強化を求めるものであり、また、使用者に金銭解決申立権を付与することに強く反対する。
2 採用内定から定年・解雇までの労働契約のあらゆるステージでの権利義務を明確化することは、安定的かつ対等な労使関係を形成する上で必要不可欠である。しかるに、日本の個別的労使関係に関する法律制度は、労働基準法や労働安全衛生法などの行政取締法規を通じての契約の自由に対する部分的規制であり、労働契約の開始から終了に関する一般法は、出向に関する民法625条が存在する程度で、殆どみるべきものがなく、判例法理に委ねられてきた。裁判所は、権利濫用、公序良俗、信義則等の民法の一般条項に依拠して判断を行うことが少なく、紛争の長期化や複雑化を招き、また、裁判の結果予測も困難であって、労働裁判制度は、市民にとって利用しにくいものとなっている。このため、労働契約法制の整備は急務である。
  厚生労働省においては、今後3年間で、調査・検討を経て労働契約法制全般を整備する作業が開始される。また、有期雇用制度についても全般的な検討作業が開始される。その内容如何によっては今後の日本の労働者の働き方を大きく左右するものであり、日本労働弁護団は、本総会の名において、当面の措置として、少なくともILO条約に盛り込まれている事項であって既にEU諸国で実現している水準での労働契約法制・有期雇用法制を実現させるため、引き続き奮闘することを表明する。

2003年11月8日
日本労働弁護団第47回全国総会