(声明)派遣労働を常用雇用代替として拡大する法案に反対する声明

2003/1/27

派遣労働を常用雇用代替として拡大する法案に反対する声明

                           2003年1月23日  
                             日本労働弁護団   
                             幹事長 鴨田哲郎

 厚生労働省は、労働者派遣の期間制限や対象業務に関する規制をさらに緩和して常用雇用の削減と派遣労働の拡大を一層促進させる労働者派遣法改正案を通常国会に提出しようとしている(・平成14年12月26日に労働政策審議会が行った建議の内容が日本労働研究機構のホームページにある厚生労働省(労働関係)発表資料平成14年12月資料一覧労働政策審議会建議-職業紹介事業制度、労働者派遣事業制度等の改正について-」とのタイトルで掲載されています)。
 労働者派遣法は、労働側の強い反対にもかかわらず1999年に適用対象業務の原則自由化などの改定が行われた。しかし、適用対象業務の原則自由化に際し、労働者派遣は「臨時的・一時的な労働力の需給調整に関する対策」として位置付けられ、常用雇用の代替とならないように、専門的業務などのいわゆる26業務や一部の例外を除き、派遣期間の上限は1年に限定された。また、「物の製造」の業務も当分の間は適用対象外とされた。
 しかるに、このような労働者派遣の規制緩和が行われる中で、1998年に89万5千人であった派遣労働者数は、1999年に106万8千人、2000年に138万6千人、2001年には174万8千人に急増し、2001年の派遣業売上高は1兆9462億円にも上った。リストラで常用雇用労働者が減少する一方、その代替として不安定雇用の派遣労働者が激増しているのである。そして、派遣労働者の賃金の値崩れも進行している。
 それにもかかわらず、厚生労働省は、規制緩和論者によって占められる総合規制改革会議の報告に従って、さらに派遣労働の期間制限や対象業務に関する規制を緩和して常用雇用の代替として派遣労働を拡大しようとする法案を通常国会に提出しようとしているのであり、このような法案はとうてい容認することができない。
 厚生労働省が通常国会に提出しようとしている法案等による派遣期間制限の規制緩和は、①専門的業務などのいわゆる26業務を除き派遣期間の上限を1年から3年に延長し、②専門的業務については派遣期間が3年を超えないようにする取扱いを廃止して期間を無限定にし、③産前産後休業・育児休業・介護休業を取得する者の業務への派遣について「通算して2年」の制限を撤廃し、④就業日数が限られる業務について派遣期間制限の対象外とする、というものである。
 また、対象業務の規制緩和は、①「物の製造」の業務を適用対象業務とし、②医業等の業務のうち社会福祉施設等における業務を適用対象業務とする、というものである。
 このような派遣期間制限や対象業務制限のなし崩し的な緩和・撤廃は、派遣労働が常用雇用の代替とならないようにするという労働者派遣法の趣旨を全く無視するものであり、常用雇用正社員のリストラを一層促進させ、派遣労働者の雇用や労働条件も悪化させるものである。
 さらに、厚生労働省は、派遣先が派遣就業前に派遣労働者を面接し履歴書を送付させることを紹介予定派遣について認めようとしているが、これは、雇用責任を負わない派遣先は派遣元が派遣する労働者を選別できないという労働者派遣の原則を無視し、年齢等による派遣労働者に対する差別を容認するものである。
 派遣労働は、派遣先が労働者を使用するにかかわらず雇用者としての責任を負わないものであり、労働者を使用する者が雇用責任を負うという雇用原則の例外的な労働形態である。派遣労働者の不安定な雇用や労働条件はこのような雇用者と使用者との分離に基づいている。
 このような企業にとって安上がりで雇用責任も負わない派遣労働が常用雇用の代替として拡大することは、ただでさえ広範囲にリストラが強行されているわが国の労働者の雇用と労働条件の確保にさらに重大な影響を及ぼすものである。
 派遣労働の期間制限や対象業務に関する規制をさらに緩和・撤廃し、常用雇用の代替として派遣労働を拡大しようとする法案は、断じて容認することができない。

以 上