サマータイム制度に反対する声明
2018/10/18
サマータイム制度に反対する声明
2018年10月18日
日本労働弁護団
幹事長 棗 一郎
1 はじめに
2018年8月7日、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が安倍晋三首相と会談し、東京五輪・パラリンピック大会の暑さ対策としてサマータイム制度の導入を要請した。これを受けて政府・与党内では、サマータイム制度導入の是非について研究会を設け、導入を検討している。
しかし、サマータイム制度は、長時間労働を助長し、労働者・市民に深刻な健康被害が生じるおそれがあるため、当弁護団はサマータイム制度の立法に反対する。
2 労働者・市民に健康被害が生じる可能性が高いこと
⑴ サマータイム制度は、労働者を含め、日本で暮らす全ての人々の日々の生活に直接影響を及ぼすものであり、単にある時点を境に、時計の針を1時間ないし2時間進めたり戻したりするだけのことではない。時計を基準に暮らしているすべての労働者・市民の生活リズムを崩すのである。
⑵ 日本睡眠学会サマータイム制度に関する特別委員会が発表した「サマータイム制度と睡眠-最終報告-」(以下「報告」という。)及び「サマータイム-健康に与える影響-」(以下「冊子」という。)によると、サマータイム制度により1時間時計をずらすだけでも、その急激な時計の変化に人間の体内時計が同調するまでには数週間を要すること、夜型人間の方が同調に時間を要すること、春の時刻変更後睡眠時間が短縮することが報告されている(報告4~5頁、冊子7頁)。
そして、日本は主な欧米各国と比較し睡眠時間が30分以上短い短時間睡眠国家であり、22時以降に起きている人の割合が80%(2005年時点)にのぼる夜型国家であることから、サマータイムによる影響を強く受け、睡眠時間が更に短くなることを指摘している(報告6~7頁、冊子13頁)。
ちなみに、スウェーデンでは、夏時間が始まった直後の初めの3日間に心筋梗塞発症のリスクが有意に増加し、1週間の平均で見ると危険率は5%高まったとのことである。また、ロシアでは、夏時間の移行時に救急車の出動回数が増え、検証の結果、心筋梗塞患者が増加していたため、サマータイムを中止したとのことである(報告3頁、冊子9頁)。
心疾患、脳血管疾患、不慮の事故及び自殺は、睡眠不足との関連が指摘されていることから、同報告書は、日本のような夜型・短時間睡眠国家では、サマータイム制度の導入によって重大な健康被害が生じることを懸念している(報告8~9頁、冊子21頁)。
⑶ 1987年以来、一連の労基法の改正により、みなし労働時間制の対象となる専門業務型裁量労働制の指定業務の拡大、企画業務型裁量労働制の法制化がなされ、さらに拡大が目論まれている。一定の労働者を労働時間規制の適用除外とする高度プロフェッショナル制度も、今年の通常国会において成立した。
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