公務員制度改革をめぐる問題

2007/10/6

(1) 政府の「公務員制度改革」の動向

 小泉内閣は、05年12月、国家公務員を06年度以降の5 年間で5 %純減し、給与制度の見直しによる総人件費の大幅削減する等を内容とする「行政改革の重要方針」を閣議決定した。そして、この決定の中で、「公務員の労働基本権や人事院制度、給与の在り方、能力主義や実績、評価に基づく処遇、キャリアシステム等公務員の人事制度を含めた公務員制度についても、国民意識や給与制度改革の推進状況等をも踏まえつつ、内閣官房を中心に幅広い観点から検討」するとし、労働基本権制約の現状維持を前提とする2000年「公務員制度改革大綱」を「修正」した。

 そして小泉内閣は、06年通常国会で「行政改革推進法案」と「競争導入による公共サービス改革法案=市場科テスト法案」を成立させ、その施行を受け、同年6月、行政改革推進本部を設置するとともに、その下に「専門調査会」を設置した。 この専門調査会は、公務の範囲、公務に従事する公務員の範囲、労働基本権を付与する公務員の範囲とその内容等を専門的に論議するとされ、その初会合は06年7月29日に開かれた。

 ところで、小泉内閣を引き継いた安倍内閣は、公務員制度改革問題を、戦後レジュームからの脱却の中核とし最重要政治課題の一つとした。

 そして公務員の労働基本権付与については、本年1月18日、渡辺喜美行革担当相は、総理の下に設置した有識者会議に、基本権を付与する方向で4 月に中間報告を出すよう求めたことを明らかにした。しかし、安倍内閣は、本年4月24日、専門調査会を秋以降に先送りとさせ、「公務員の再就職規制の見直し」と「能力・実績主義の人事管理」導入の「国家公務員法改正案」を通常国会に提出し、併せて、①専門スタッフ職の実現、②公募制の導入、③官民交流の抜本的拡大、④定年延長を柱とし、「採用から退職までの公務員の人事制度全般について検討し公務員制度の総合的な改革を推進いるための基本方針を盛り込んだ「国家公務員制度改革基本法」(仮称)を時期通常国会に提出することを閣議決定した。

 そして、安倍内閣は、会期を延長し、本年6月30日、与党のみによる強行裁決により、前記「改正法」可決・成立させた。

(2) 専門調査会の審議動向

 しかし、専門調査会は、基本権問を先送りした本年4月24日の第9回目の審議で、「労働基本権を含む公務員の労使関係の問題についても、改革の方向で見直すべきである」とする佐々木毅座長文書「専門調査会における議論の整理」を承認し、労働基本権付与問題は、今後小委員会を設置し、基本権付与に伴う問題点を整理した上で、秋以降に結論を出すとし、今後の作業の方向として、基本権を付与した場合の具体的仕組みや課題として、ア)団結権については、制限の必要性、付与した 場合の影響等、イ)協約締結権については、付与する職員の範囲、協約締結事項の範囲、交渉当事者、協約の効力、交渉不調の場合の調整方法、人事院のあり方等、ウ)葬儀権については、付与した場合の国民生活への影響等、の検討をシュミレーションして行うとしている。 参院選与党大敗北による参議院過半数割れした安倍内閣の下で、「専門調査会」を舞台に公務員労働者の労働基本権の回復に道筋がつけられるかどうか、いよいよ正念場に差しかかった政治情勢にあると言えよう。

以上